温泉について - 「温泉の解説」文・温泉コム代表 大竹仁一 - 忘れの里 雅叙苑

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温泉について - 「温泉の解説」文・温泉コム代表 大竹仁一

文・「貸切温泉どっとこむ」/温泉コム株式会社 代表取締役 大竹仁一

「忘れの里 雅叙苑」は、3つの自家源泉を使用している。
その源泉を使って、かけ流し(お湯を循環せず、湯舟に常に新しい源泉を注ぎオーバーフローさせる方式)にしている。
うち、メインで使用しているのが、37℃と54℃の泉温の違う温泉を混合したもの。
泉質名は、「ナトリウム・カルシウム・マグネシウム−炭酸水素塩泉」。
旧泉質名は「含土類−重曹泉」。
無色透明の、この温泉が、男女別浴場の「建湯(たけるゆ)」で使用されている。
温度の低い37℃の源泉井戸は、「雅叙苑」敷地内にある。
掘削自噴の井戸だが、以前は50℃前後あったという。
敷地前に流れる清流・天降川(あもりがわ)の度重なる増水などにより泉温が下がったため、2q弱離れた「にわとり牧場」(同社経営)にあるボーリングして掘削した井戸から、57℃の源泉を「雅叙苑」の敷地まで引湯している。
それを混合して、41℃前後の適温にしているわけだ。
温泉の特徴は、まず「美肌の湯」と形容される「重曹泉」(ナトリウム−炭酸水素塩泉)のキャラクターが際立つ。
「重曹泉」は、石鹸と同じように、肌に付着した皮脂や老廃物を乳状にして洗い流す作用がある。
肌がツルツルスベスベになるのはそのせいだ。
入浴後は、肌に付着した炭酸ガスの作用により、水分発散が盛んになり、さっぱりとした清涼感を得られることから「清涼の湯」とも呼ばれる。
そして、第二の特徴は「重炭酸土類泉」(カルシウム・マグネシウム−炭酸水素塩泉)。
カルシウムやマグネシウムなどの土類が含まれると鎮静作用や炎症を抑える効果が得られる。
アレルギー疾患やじんましんなどにも効果があると言われている。
天然の保湿成分と呼ばれるメタケイ酸も温泉基準値の2.5倍も入っているので、美肌効果に拍車をかけている。
しかも、pH6.6の中性。
一般的に人肌は弱酸性となっているが、それに近いpH値であるため、肌への刺激も少なく、赤ちゃんや年配の方など、肌の弱い方にも向いている泉質と言えるだろう。

客室露天風呂の温泉は、主に高温の源泉(にわとり牧場の源泉)を使用している。
夏季など湯温が下がらない場合は、地下水を加水して、温度調節をしている。
上記のように、改めて温泉の溶存物質を分析してみると特徴が見えてくるが、「雅叙苑」の温泉には数字では評価できない何かがあるのは確かだ。
それはいわゆる「転地効果」というものかもしれない。
それは、日常と違った環境や土地に移ることにより、五感が刺激され療養効果が増すというもの。
精神的にリフレッシュできるのも大きい。

「建湯」と同じ混合泉は、敷地の一番先にある貸切風呂「打たせ湯/ラムネ湯」でも使われている。
入口近くにある湯舟がそうだ。
ただし、打たせ湯は、温度の低い37℃の温泉を使っている。
しかし、奥のもうひとつの湯舟で使われているのは、第3の源泉。
それは、古くからある自然湧出の自噴泉のことで、通称「ラムネ湯」(36℃前後)と呼ばれている。
この宿では温泉分析をしていないため、正確な泉質はここではご紹介できないが、「建湯」よりも炭酸ガスが多く含まれていることから「純二酸化炭素泉(旧泉質名:純炭酸泉)」の要素が高いのかもしれない。
その証拠に、入浴した際、体毛に炭酸の泡が付着するのが分かる。
「二酸化炭素泉」は、空気に触れたり、時間が経過すると効能が落ちるものだが、ここでは泉源が湯舟の直下という事もあり、新鮮で理想的な湯浴みができる。
炭酸ガスの無数の気泡が、肌に刺激を与え、毛細血管を拡張させる効果があるため、血液の循環を促進させ、血圧を下げる効果も期待できる。
そのため「心臓の湯」とも呼ばれている。

このように「雅叙苑」は、露天風呂付き客室や、茅葺き屋根の離れなどハード面や雰囲気が第一印象として把握できるが、実は、循環ろ過や消毒などしない、本物の温泉をそのまま使っている、本格的な温泉旅館であることがお分かりだろう。
同じ妙見温泉に、「たじま本館」という湯治宿がある。
実は、それもオーナーが同じ。
湯守精神がある宿の主人は、どんな形態の宿を造ろうと、本物の温泉にこだわるようだ。
ちなみにやはり同経営の「天空の森」も、源泉かけ流しである。